第4回 カトランベーカリー 店長 那智 紀雄(なち のりお)さん

自分たちの手で新しい習志野ブランドを!
ドイツ風揚げパン「習志野ベルリーナー」
生みの親は生粋の“習志野っこ”

2006年春、「この街ならではの商品、この街を盛り上げていく商品をつくりたい」と、習志野市商工会議所職員と市内の若手商店主が集まり発足した「習志野商工会議所 習志野ブランド研究会」。そこから誕生した“習志野ブランド” 第1号が、ドイツの揚げパン・ベルリーナーをアレンジした「習志野ベルリーナー」です。この商品を開発・製造したカトランベーカリーの二代目・那智 紀雄さんは、この地で生まれ育った生粋の“習志野っこ”。紀雄さんのお父様でカトランベーカリー代表・那智 甲子雄(きねお)さんも、途中からインタビューに参加してくださいました。
「習志野ベルリーナー」誕生までの経緯をお聞かせください。
<紀雄さん>
習志野はドイツと縁のある地です。大正時代、東習志野にはドイツ人俘虜収容所がありました。この街にやって来たドイツ人たちは、習志野にソーセージ、ビールなどドイツのさまざまな食文化を残していったのですが、彼らがベルリーナーというお菓子も作っていた、という資料が出て来たんですね。で、商工会議所からこれを商品化して、新しい習志野の名産品として売り出してみないか、というお話をいただいたのです。

まず、ベルリーナーを作っているというお店を探して買いに行ったり、自分なりにいろいろとこのお菓子について調べたり、ということから始めました。もともとベルリーナーは、ジャム入りドーナツみたいな感じの、素朴で甘いお菓子なんですよ。でも、そのまま作って売るんじゃつまらない。せっかく町おこしとして作るのだから、習志野ならではのオリジナリティを加えようと、仲間達と話し合いながら、いろいろ工夫しました。
どんな工夫をしたのですか?

<紀雄さん>
「習志野ベルリーナー」は2 種類あって、その一つが『ジャーマンポテト&ソーセージ味』。「甘いもの一辺倒じゃ…」ということで、ジャガイモとソーセージを使ってみたら「ドイツらしくていいじゃないか」と好評。商品化が決まりました。もう1 種類はイチゴジャムとカスタードクリームが入った『カスタード&ジャム味』。試作段階では、さまざまな種類のジャムを試しましたよ。その結果「日本人に最もなじみがあるイチゴジャムが、やはり一番しっくり来るな」となったわけです。
完成した「習志野ベルリーナー」はまず、この年に行われた市民まつり「習志野きらっと2006」で、市民の皆さんに振る舞われたそうですね。皆さんの反応はいかがでしたか?
<紀雄さん>
このイベントが行われたのは7月末でした。暑い時季に揚げ物ってどうなんだろうと心配だったのですが、食べた方々が口を揃えて「おいしい!」と言ってくださって。このとき、「いける!」と手応えを感じましたね。その後、期間限定販売などの形で様子を見ていたのですが、数ヶ月でNHKや新聞で取り上げられるようになり、売り上げがぐっと増えました。地元のお客様はもちろん、横浜とか遠方からわざわざ買いに来てくださった方もいます。いま「習志野ベルリーナー」は毎週土・日曜日が販売日。1個110円です。
「カトランベーカリー」は昭和43年創業と伺いました。この街でお店を開いたきっかけ、またこの街の魅力を教えてください。

<甲子雄さん>
もともと浅草橋に住んでいたんですが、修業先から独立して自分の店を持とうとしたとき、友達から薦められたんですよ。「これからの街だから」って。
移り住んでみたら、本当にいいところでね。東京に比べて公園が多い、緑が多い、街に歴史があって落ち着いている。教育に熱心で学校がたくさんあり、実は学園都市の顔もある。息子はここで生まれて大きくなりました。
<紀雄さん>
子ども時代は、近所に畑がいっぱいありました。実はここは日本の騎兵隊発祥の地、“騎兵の街・習志野”だったんですよ。その関係もあって、昔からにんじんの栽培が盛ん。「習志野にんじん」といえば、習志野が誇るブランド特産品なんです。
あの頃に比べたら、畑が減って住宅がたくさん建ち、風景はだいぶ変わりましたね。大人になってこの街を離れた友人も多い。でもね、一度離れてもまた戻ってくる人がけっこう多いんですよ。子育てをするような年代になると「やはり習志野で」と思うのでしょうね。

<甲子雄さん>
時々みえるんですよ、「習志野に戻って来たから買いに来たよ」というお客様が。うちのマドレーヌやイギリスパン、アンパン、チーズパンなどは、創業以来ずっと同じ味。「子どもの頃食べていた味だ。懐かしい」と、喜んでくださいます。
今後の抱負をお聞かせください。
<甲子雄さん>
まず店を続けていくこと。これが大前提ですが、創業以来の味を守りつつ、息子が作る新しい味も取り入れていきたいと思っています。昔から変わらない商品を「懐かしい」と喜んでくださるお客様がいらっしゃる一方、新しいお客様も増えていますのでね。
<紀雄さん>
2009年からNHKで、司馬遼太郎原作のドラマ「坂の上の雲」が放送されるのはご存じですか?このドラマに習志野の騎兵隊が登場するので、地元の大久保商店街から「騎兵隊にちなんだ商品を開発してほしい」という依頼が来ているんです。これが、とにかく今やらなきゃいけない“宿題”(笑)。それから「習志野商工会議所 習志野ブランド研究会」の方でも、「習志野ベルリーナー」に続く、“ドイツゆかりの習志野ブランド品第二弾”の企画を、仲間達と一緒に考えているところです。本場ドイツの味を皆さんにお伝えできるような商品にしたいと思っています。
僕は“習志野っこ”ですからね。これからもがんばって習志野の味を作っていきたいですね。
インタビューを終えて。
那智 紀雄氏
カトランベーカリー 店長
18歳の時、東京へ。製菓学校(洋菓子)→他店での修業→製菓学校(パン)を経て、習志野に戻る。
7年前より、父・那智 甲子雄氏と共に、家業の「カトランベーカリー」の仕事に従事。

カトランベーカリーでは、習志野市ふるさと産品認定を受けている「にんじんクッキー」という商品を販売しています。これは約14年前、習志野ブランド作りをめざす市の意向を受けて、甲子雄さんが開発したもの。月日を経て、息子の紀雄さんが新しい習志野ブランド作りに乗り出し、「習志野べルリーナー」を生み出す…。「習志野べルリーナー」にまつわるエピソードを語る紀雄さんを、笑顔で見守る甲子雄さんの姿に、同じ道を歩む親子ならではの絆を感じました。

カトランベーカリー
習志野市本大久保4-16-6 京成大久保駅南口徒歩約5分
【営業時間】
午前9時~午後8時
【休日】
月曜日、1月1日~3日

ちょっとオマケ!
鮮やかな色彩と斬新な構図で知られ、日本にも多くのファンがいるフランス人画家ベルナール・カトランが店名の由来。甲子雄さんがかつて勤めていたパン屋は、外国人向けアパートメントがあるマンションの1F にあり、カトランが来日時によく利用していたのだとか。名前の使用については、カトラン本人の了承を得ているそうです。

